環境・安全コンプライアンス 健康経営を意識した“安全衛生管理体制”構築とその盲点

21 May 2021 9:00 am

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レクシスネクシス・ジャパンでは「環境・安全コンプライアンス」に関するセミナーを定期的に開催しています。近年、産業界でその必要性が求められている「健康経営」をキーワードに、安全衛生管理はどうあるべきか、その体制構築の中身や盲点などを問題提起した同セミナーの概要を紹介します。

安全衛生管理体制の最近の動向

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日本企業における安全衛生管理体制の実態はどうなっているのでしょうか。その現状について公的機関が実施した調査データをもとに検証しましょう。

労働災害の傾向と社員の安全衛生管理

近年、日本の産業界における労働災害の中身を見てみると、死亡事故は大幅に減少しているものの、4日以上の休暇を必要とする疾病者数は下げ止まりの傾向です。どの企業も人材の組織定着と帰属意識を高めることで生産性の向上を目指しますが、脆弱な安全衛生管理体制により社員の健康が損なわれ、結果的に業績にもマイナスの影響が表面化します。すなわち現代は、企業側に安全衛生管理体制の構築が求められている時代なのです。

コンプライアンスのための重要事項

社内にコンプライアンス意識を根付かせるには「法律を根幹にした体制構築」と「社員の意識を醸成させること」の2点が重要です。これをもとに「企業全体の安全・衛生体制を高水準レベルに引き上げる」ことが実現すれば、業務のPDCAサイクルが順調に進みます。

さらに「安全・衛生体制のレベルが数値として示され可視化される」ことが理想であり、現代はこのような安全・衛生体制が構築された職場環境の充実が求められているのです。

「健康経営」による企業貢献

最近は、企業における「健康経営」という言葉がよく聞かれるようになりました。これは「社員の健康に留意した経営」という企業の指針を意味する言葉です。健康経営については、経産省による「平成30年度健康寿命延伸産業創出推進事業」の報告書を見ると「健康経営が労働者の生産性向上につながっている」という興味深い指標が読み取れます。さらに「従業員を大事にする会社」は就職(転職)市場から高く評価されるという傾向が強くなってきている事実も示しています。すなわち「働く人への配慮」が「社員の帰属意識の向上」と「人材の定着」につながり、結果的に生産性の向上が実現するという構図となっているわけです。

求められる安全衛生管理体制

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企業に求められるのは、健康経営を意識したマネジメントと「労働安全衛生関連法」を基軸とする安全衛生管理体制です。この体制が喚起している重要項目について解説しましょう。

快適な職場環境の実現と労働災害防止対策

労働者への配慮と労働災害防止基準を有する安全衛生管理体制の構築が重要課題とされています。それと同時に安全衛生管理体制における責任体制の明確化と労働災害防止基準を満たした施策を確立することを優先させなければなりません。

実務上、押さえるべきポイントとしては次の4項目が挙げられます。

  1. 自社の事業・業務を意識した責任体制構築
  2. 自社の事業の社会性と業務に取り組む労働者の健康と安全をしっかりと意識した責任ある体制を構築すること。

  3. 確認事項チェックシートの作成
  4. 労働災害を防止し安全衛生管理体制を機能させるために、項目ごとのチェックシートを作成すること。

  5. PDCAサイクルのための定期チェック
  6. 「Plan(計画)・Do(実行)・Check(確認)・Action(改善)」のPDCAサイクルを有効に継続するために、各業務の進捗状況を定期的にチェックすること。

  7. 労働者の行動意識への現状把握と分析
  8. 労働者の仕事への姿勢が規範通りになっているか、現場責任者が定期的に行動意識についてヒアリングなどを行い、現状把握と分析を行い、問題点の改善に務めること。

責任ある安全衛生管理体制とは?

責任ある安全衛生管理体制とは「職場の安全と衛生を確保するための役割を担う人材を配置すること」です。これを具現化するには「作業内容や現場の規模によって定めること」が必要です。安全衛生管理体制の重要責務として次の5項目が挙げられます。

・元方事業者としての責務

製造業などでは、元方事業者が下請け業者を利用することがよくあります。労働安全衛生法 第29条には「元方事業者の講ずべき措置等」として、下請け業者の安全・衛生・危険回避についても元方事業者が責任を負うべきと規定されています。

・快適な職場環境を整える安全衛生管理

「安全衛生管理体制」とは、労働者が働きやすく快適な職場環境を整えることです。そしてその体制は会社主導でシステム化され、正常に機能することについて、会社が責任を負わねばなりません。

・労働者の健康保持

労働者の健康について、「明確な労災事故以外は自己責任」という風潮が以前はありました。「責任ある安全衛生体制」では、労働者のメンタル面まで含めて健康保持に留意すべきことを企業に求めています。

・労働者への安全衛生教育

安全と衛生管理に留意する「健康経営」の意義について、管理職だけでなく従業員全員が理解し行動する必要があり、会社は労働者への安全衛生教育を実施せねばなりません。

・有資格のみが就労する業務の指定

公的資格を有する資格者以外には就労できない業務が法的に定められており、会社はこれを遵守し、現場責任者は違反がないかどうか監理・監督する責任があります。

労働安全衛生法による報告義務と安全衛生管理体制の盲点

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企業は「労働安全衛生法」が定める各種報告義務を遵守し、確固たる安全衛生管理体制を構築せねばなりません。ここでは労働安全衛生法が定める報告義務事項を紹介し、安全衛生管理体制における盲点となりやすい注意事項について解説しましょう。なお、各項目にある数値は、従業員1,000名以上5,000名未満規模の企業を対象とした、厚生労働省による「平成30年労働安全衛生調査(実態調査)」、および「平成22年労働安全衛生基本調査」によるものです。

安全衛生担当者の選任と届出

安全衛生担当者の選任と労基署への届出が労働安全衛生法にて企業に義務付けられています。同法では10名以上の事業所単位と定められていますが、企業の16.6%が未選任・未届けというのが実態です。この規定は努力義務ではなく違反企業には50万円以下の罰金が課せられます。

安全衛生委員会の設置

安全衛生委員会の定期的な開催と文書の保存についても法的に義務付けられていますが、委員会については54.4%が未設置なので、実に半数以上の企業で安全衛生委員会そのものがないという現状です。

なお、安全衛生管理の水準については、64.7%の企業が「水準低下のおそれなし」と回答していることから、6割以上の企業が「自社の安全衛生管理体制を問題視していない」と考えていることが読み取れます。

各種文書の労基署への届出

基本的な労使間協定である「三六協定」や「定期健康診断結果」などは労基署への届出が義務付けられています。安全衛生管理体制の盲点といえるこれらの項目は、いずれも法律に則りきちんと届出を実行することで問題発生が防止できるものがほとんどです。企業は、摘発されることが少ないという現実を甘受することなく、法令順守が企業の社会的責務との意識を強く持つべきでしょう。その意味では、多くの企業に地道な安全衛生管理体制の見直しが求められています。

労働災害防止対策への関心

ただ一方では89.2%の企業は「労働災害防止対策」への関心は高いとの回答結果でした。「関心なし」と回答した約1割の企業は「災害はほとんど発生していないから」「危険と思われる機械を使っていないから」という点を理由に挙げています。すなわち「関心はあるが今は労災がないと思っている」ということでしょう。しかしながら、死亡事故は激減しているものの、労災事故による疾病や怪我などの事故が減っていないという事実は、労働災害防止対策を軽んじた結果ともいえます。

労働災害の防止こそ、従業員の健康と仕事上の安全を確保することであり、それが会社全体の生産性の向上につながることを、企業の経営者は肝に銘じるべきでしょう。また、労働災害の防止を有効に機能させることは、隠ぺい工作などの不祥事や紛争の防止にもつながります。

安全衛生管理体制の施策実現のための解決策

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労働安全衛生法は、最低限の事項が規定されているので、決して全てのリスクをカバーしているわけではありません。安全衛生管理体制の施策を実現する枠組みとしてのリスクアセスメントを実施することが重要です。

リスクアセスメントの実施フロー

リスクアセスメントを実施するための項目は次のようになります。

・危険性または有害性を特定する

・リスクを見積る

・リスク低減のために優先度を設定。あわせてリスク低減措置を検討する

・リスク低減措置を実施とその結果を記録する

企業は、労働者の安全確保のために、これらの項目を実施フローとしてチャート化し、その実行について検証し、問題点はすぐに改善に向けて行動せねばなりません。

リスクアセスメントの実施例

金属加工業によるリスクアセスメントの実施についてチャート化した表の実例です。

①作業名

(機械設備)

②危険性又は有害性と発生のおそれのある災害

③実施している災害防止対策

重篤度

可能性

優先度

ディスクグラインダー作業

エア又は電源をつなぐときに、スイッチがONの位置にあったため、突然ディスクが回転し、手を切傷する

使用後、必ずスイッチをOFFにして、保管する

ハンドドリルで穴あけ作業

ドリルの抜け際に、突然切削反力がなくなり、ドリルを勢いよく押し込んで加工物とドリルの間に指を挟む

①加工深さを加工前に確認する

②ドリル抜け際での加工深さ位置にマーカーで印をつける

切削加工作業

切削作業中に、飛んでくる切粉との接触により、指を負傷する

防止対策未実施

上記の表は金属加工業の業務の一例です(実際には、各事業所で行っているほぼ全ての業務について、このような作業を繰り返し行う必要があります)。リスクアセスメントの実施と共に、リスクアセスメントを踏まえたチェック体制の断続的な見直しや確認が必要となります。

実施後の課題として、第三者的な視点でチェックできる仕組みと習慣的な規制情報のトラッキング、および法令改正の影響の確認も重要です。

まとめ

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現代企業に求められている「健康経営」と、企業が積極的に実行すべき「安全衛生管理体制」の構築について実施されたセミナーの概要を紹介しました。「安全衛生管理体制」がまだ十分ではない企業、あるいは業務項目が多岐にわたり、全社的な対応に不安を抱いている企業の管理職、現場責任者の方も多いことと推察します。

そのような不安を解消するために、レクシスネクシス・ジャパンでは「LexisNexis🄬 ASONE(レクシスネクシス アズワン、以下ASONE)」という法人向けソリューションを開発しました。ASONEには、業務別1,200以上のチェックシートが収録されていできます。そしてチェック項目は自社向けにカスタマイズができるので、業務ごと作業ごとにチェックシートを作成して定期チェックすることができる便利なソリューションです。ASONEの導入によって、安全衛生管理体制を効率よく構築でき、現場での労災事故を可能な限り防止することができます。

レクシスネクシス・ジャパンでは、ASONEの1週間無料体験ができるサービスを実施中で、定期的に開催される「環境・安全コンプライアンス」のオンラインセミナーの資料やサンプルチェックシートも提供中です。

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