アジア法務の思考回路「アジア子会社におけるガバナンス強化」

28 January 2022 09:00

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日本の経済界では、会社経営の組織運営で重要な三要素として「ヒト・モノ・カネ」という言葉が有名です。そして今、2020年初頭から世界中にまん延し続ける新型コロナウイルス感染症の影響で、海外に拠点を持つグローバル企業においては「人の移動」、すなわち社員を海外の現地子会社に派遣する、あるいは帰国させる時期と頻度についての判断の難しさに直面しています。

特に、日本本社と現地を頻繁に往来しマネジメント業務を担当していた社員は、コロナ禍によってその業務が困難となり、多くのグローバル企業の業務に多大な影響を及ぼしている現状です。通常のマネジメント業務はともかく、企業のコンプライアンス部門に関わる業務を現地採用の社員に任せきりにすることは、企業のガバナンスに大きなリスクを背負うこととなり得ます。

レクシスネクシス・ジャパンでは『アジア法務の思考回路』シリーズでこの問題をとりあげた『アジア子会社におけるガバナンス強化』と題するホワイトペーパーを刊行しました。著者は「AsiaWise法律事務所」を2018年に創業された久保光太郎代表弁護士と、同事務所の佐藤賢紀弁護士のお二方です。

Ⅰ.アジア各国における取締役・取締役会に関する法規制

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企業に対する法規制は国によって異なります。特に、経営幹部に関する法律の定めが日本と当該国とでは異なることを事前に把握しておくことが重要です。いわゆる「日本式」の経営判断が、当該国の法律に抵触する場合があるからです。『アジア子会社におけるガバナンス強化』では、シンガポール・中国・タイ・インド・インドネシアの主要5カ国における取締役と取締役会への法規制の特徴について論述されています。

1.取締役の要件に関する各国の法制度

取締役の居住性や国籍に関する要件は、会社のガバナンスを正常に機能させるために重要な法律といえるでしょう。同書では「アジア主要国における取締役の居住性についての要件」と題して、アジアの主要5カ国における要件の差異について紹介されています。いずれも、アジアに事業を拡張する日本のグローバル企業にとっては重要なアジア諸国なので、これらの法制度は熟知しておくことが必要です。

2.取締役会の開催方法に関する各国の法制度

取締役会の開催方法においても、アジア各国でそれぞれに異なる法規制が制定されています。取締役会が会社での重要かつ最終的な意思決定機関となるだけに、国ごとに異なる法規制をクリアした上で取締役会を開催し運用することが必要です。同書では「取締役会の開催方法およびテレビ会議による開催についての制限」と題する図表を用いて、取締役会とテレビ会議に関する、アジア主要5カ国の法規制が紹介されています。

コロナ禍によって本社役員の渡航が困難な状況である現在、特にテレビ会議での取締役会の開催に対するアジア主要国の法規制を正確に把握しておく必要があるでしょう。

Ⅱ.ケーススタディの検討

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コロナ禍では、会社経営に関する重要事項の決定に際して、本社役員の現地派遣が困難なケースが生じます。その際、グローバル企業としてはどのように対応すべきか、その解決策の立案が急務といえるでしょう。『アジア子会社におけるガバナンス強化』では、この問題について4項目のケーススタディを設定し、それぞれの対応策について解説されています。

1.一時的に取締役を選任する必要がある場合の留意点(追加取締役の選任)

現地の駐在員を一時的に取締役として選任する必要に迫られた場合に、日本本社がどのような対応策をとるべきなのか、事前にその策を決めておかねばなりません。

CASE STUDY 1

新型コロナウイルス感染症の流行によって、日本本社の取締役が渡航できない状況下が発生し、現地従業員を取締役に登用する場合の留意点が「CASE STUDY 1」に解説されています。このような案件についても、アジアの主要国は国ごとに異なる法規制を敷いていることを事前に把握しておくことが必要です。同書ではさらに、このようなケースで起きる問題点と、その対処法について論述されています。

2.名目取締役(ノミニーダイレクター)の選任

日本のグローバル企業では、海外の現地法人において通常の取締役ではなく、あくまでも名目上の取締役として「名目取締役 (ノミニーダイレクター)」を起用することがあります。しかしながら、名目取締役への法的責任が日本と外国では異なることによって生じる問題の対処が大きな課題です。

『アジア子会社におけるガバナンス強化』では、名目取締役の選任において起きうる問題や対策についてCASE STUDY 2として解説されています。

CASE STUDY 2

名目取締役を選任する場合に、よくある事象が同書ではCASE STUDY 2として提起されています。日本とは異なる法律により、万一の場合に名目取締役の責任がどこまで追及されるのかという問題や外部事業者による名目取締役の派遣についても言及されています。

3.現地子会社のガバナンスのための方策

アジア各国に現地子会社がある日本企業にとって頭を悩ませる問題の一つが、現地従業員による不正事件の多さです。『アジア子会社におけるガバナンス強化』では、現実に起こり得る事象をCASE STUDY 3として提起し、その対応策について解説されています。

CASE STUDY 3

アジア某国の現地子会社における日本人駐在社員の人数を減らすことを検討しているケースを想定しています。マネジメント担当者の監視の眼が行き届かなくなって起きる不正行為を防止するための視点や方策について言及されています。

(1)過去事例の分析

過去に発生した現地子会社での不正行為を検証し分析する必要性と、それらの方法論について記述されています。

(2)内部通報制度の定着

現地子会社での不正行為が起きる要因が挙げられており、その対策として「イレギュラーなレポートライン」としての「内部通報者制度」の導入の有効性が紹介されています。

(3)外部専門家の活用

本社の眼が行き届かない現地子会社では、社内監査制度だけでは不正防止に限界があることは否めません。法律事務所など「外部専門家」を活用することも考慮に値する方策であることが述べられています。

(4)厳正な処分の実施

規則あるところに懲罰あり。規則は、厳格な懲罰制度があることで有効となるものです。不正の抑止力としての懲罰制度の構築は、社内のガバナンスに組み入れるべき重要な項目であることが解説されています。

4.テレワーク規程の策定

コロナ禍で一気に広がった業務形態が「テレワーク」です。これまであまり想定されていなかったテレワークでの業務上の規定について、グローバル企業は早急に策定を進めることが重要です。『アジア子会社におけるガバナンス強化』では、テレワーク既定を構築することの重要性について「CASE STUDY 4」として解説されています。

CASE STUDY 4

テレワークに就く社員と、これまで通り通勤して事務所で仕事をする社員とに業務形態が区分されたケースが想定されています。その内容は、社員から出る不満の解消や、テレワーク業務での情報漏えいのリスクについての論考です。同書では、テレワーク規定を策定する際の9項目のポイントが解説されており、同時に各国の規制に準じた具体的な方策が同書で紹介されています。

まとめ

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新型コロナウイルスの流行は、日本のグローバル企業における海外子会社でのガバナンス強化について、制度の見直しと再構築の必要性を熟考する機会となるかもしれません。特に問題発生のリスクが高いアジア諸国とのビジネスを展開するグローバル企業こそ、流行性感染症という未曽有の事態を、企業の発展のための契機とすることが求められます。

『アジア法務の思考回路』シリーズの『アジア子会社におけるガバナンス強化』は、ガバナンス強化という重要なテーマを論述する内容です。この課題を抱えるグローバル企業のコンプライアンス部門担当者が、同書を読んですぐに理解できるわかりやすい内容となっており、このテーマにおける諸問題とその対応策などがまとめられています。インターネットで手軽にダウンロードできますので、この機会にぜひご一読ください。

注釈:「【アジア法務の思考回路】「アジア子会社におけるガバナンス強化」はLexisNexisビジネスロー・ジャーナル2020年12月号に掲載された連載記事です。解説の内容は掲載時点の情報です。

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